胸にぽっかりと穴が空いたと言うよりは、そこに虚無が広がっている、そんな感じだった。

少女はなにも分からないままそこにいた。
分かっているのは、自分が死んでいるということだけ。
全て、忘れた。
自分の存在も、自分の想いも。

少年が来て、自分の所で泣いていて、少しずつ、何かが満たされていった。

「でもね」

「泣いてほしい訳じゃないのよ」

その想いの正体も、少女は知らない。





20071202