きみをさがす
ひょこり、ひょこり。 足元が覚束ないながらも、足の裏から伝わってくる土の感覚が愛おしい。 「脱出…成功、っと」 病院の生け垣の穴を潜り抜けて、少年は顔を上げた。 「…ッす、ご…!」 少年の頭上。 一面に広がる、蒼。 「空気、すっごい…空がずっと続いてる…!」 大きく息を吸い込むと、その小さな胸が満たされる心地がした。 それと、少しの痛み。 「…少し、だけで良いんだ」 言い訳のように呟いて、一歩踏み出す。 少年の頭上では、広がる蒼にきらり、浮かんだ太陽がくるくる回っていた。
20140602