夢魔の系譜



「君は夢を見るだろう?
そう、眠る時に見るアレだよ。僕には人に自分の考えた夢を見せる能力があってね。
この間なんかは僕に難癖つけて来たクラスメイトに、
なめこがゾンビになって襲い掛かってくる夢を見せてやったよ。ああ、あれは楽しかったねえ」



なめこ、ゾンビ、能力
二十四の悪夢 留学から帰ってきたら弟にしっぽが生えていた。 「…何それ?」 「先祖帰りというやつだよ兄さん。それより役者のオーディションを受けるんだろう? 今日から睡眠練習出来るように夢を見せてあげるよ」 「やめろ」 圧迫面接より恐ろしい可愛い弟の話。
留学、役者、しっぽ
かわいい弟 「俺は被害者なんですよ」 一人酒を飲んでそう泣く。 「此処は泥沼なんです。血の繋がりが俺を逃してはくれない…」 「とか言ってちゃんと実家に帰ってくるのだからそう重要な悩みでもないのだよ、マスター。 いつもの幸せ自慢だだ」 隣でなんのアルコールも入っていない元凶が何か言っている。 「…幸せって」 「幸せだろう?」 可愛い弟がいて。 にこにこと笑うそいつに、自分で言うなよとチョップをしておいた。
被害者、マスター、沼
安月給のヒーロー ゆらゆらと揺すられる。眠い、とても眠い。放っておいてくれ。 揺する気配はため息を吐いた。諦めてくれたか、そう思った瞬間、瞼の裏に弟が出てくる。 「兄さん、寝坊じゃないのか」 飛び起きた。 「今何時!?」 「九時」 「やっば! ぎりぎり!」 「今日はなんの仕事なんだ? パン焼けてる」 「さんきゅー! 今はヒーローやってる」 「なるほど。睡魔にも勝てない…いやまず、戦うことすら放棄するヒーローか」 「うるせえ」 「ヒーローは遅れてくるものだから遅刻しても良いんじゃないのか」 「んな訳あるか!」 着替えてからパンを牛乳で飲み込んで、そのまま家を飛び出した。
戦う、寝坊、ヒーロー
弟の策略 正月だから書き初めをしよう、 と弟が真面なことを言い出したので疑って掛かるとひどいなぁと笑われた。 「僕はうら若き男子高校生だよ?」 「うら若き男子高校生はその辺の小学生にダンゴムシの悪夢を見せたりしない」 「兄さんに見せた訳じゃないだろう」 あれはダンゴムシを虐待していた小僧どもが悪いのだよ、 と言う弟は確かに心根の優しい良い弟ではあるけれど。 「さて、ほら、兄さんも書いてくれ」 「まさかそれを提出しようなんて言わないよな?」 「大丈夫だ、高校の宿題に書き初めなんてない」 それもそうだな、と筆をとった。 それが賞をとったと通知が来たのは数ヶ月後のことだった。
書き初め、虐待、男子高校生
ライトレ
20150304