分かってはいたんだ。
この人達が居ることで、私は限りなく窮地に追い込まれるんだって、ことくらい…。



メイキング チョコレイト!
「そこ!!つまみ食いしない!!」 普段の涼水なら絶対に出さないような声が、黎明堂中に響き渡る。 「すずちゃんケチー」 十六夜が口をとがらした。 「少しくらい良いんじゃない…?」 鹿驚もチョコを名残惜しそうに見た。 「ダメ!絶っっっ(ため)っっっ対、ダメ!!!」 涼水はボウルの中のチョコレートを、安全な場所へと移した。 ここで何が起こっているのかというと…。 今日は二月十三日。(もっと詳しく言うと、夜の十一時三十分だ!) そう! とっても、とっても大事な日は、何と、明日に迫ってきているのだ!! 「チョコ、作らなきゃ!!」 その涼水の一言で、全ては始まった。 が。 やはり、難関はあった…。 「こら、いずみ!!そこでつまみ食いしない!!」 そう。 ここには、甘党がたくさんいるのだ。 「え――っチョコ――」 ばたばたするいずみを、涼水は抱き上げる。 135pめちゃくちゃ小柄ないずみ。 甘いものを毎日食べているのに、どうして太らないんだ、コイツは。 (こっちが聞きたい!by作者) 「あーっもーっ!後で鼻血が出るほど食べさしてあげるから!」 「!」 いずみの顔が輝く。 「約束だヨ?」 あぁ、コレで店の売り上げの半分は、いずみのおやつに変わるんだ…。 涼水はため息を吐いた。 「後でね」 「うん、約束」 ゆびきりを交わすと、いずみは涼水の腕から飛び降りた。 「じゃ、僕、仕事してくるネー」 仕事、あったのか。 「チョコの差し入れ、忘れないでネー」 普通にご飯食え、ご飯。 ヒラヒラと小さく手を振るいずみに、涼水は仕方なく手を振り返した。 「よしっ。やるぞ」 いずみが見えなくなると、涼水は腕をまくった。 「!?!?」 台所の方を振り向いた涼水は絶句。 「な、な…」 声が震える。 ソコには、全てが真っ黒な――― 「何やってんですか!!」 凜が居た。 「はい、決してイニシャルGではありません。 多少カサコソ動いたりはしますが、間違いなく、凜です」 「って、そんなCMみたいな台詞、要りません!!」 我に返った涼水は凜を台所から追い出すと、 「今度こそ…!!」 やっとチョコ作りに取りかかった。 (只今の時刻、十一時五十八分!) 「すずちゃん、遅いねぇ…」 今で待つ十六夜が呟く。 「何であんなに頑張ってるんだろ?」 凜が肘をつきながら言った。 鹿驚、そしていつのまにかやって来た草希も、一緒になって考える。 「仮定は…二つ、いや三つ思いつくよ」 草希が硬い顔で言った。 「まぁ、一つはありえないとして…まだね。 すずちゃんが来てから、二年しか経ってないし…」 十六夜が更に硬い顔で言う。 「涼水のことだから…“お世話になってるお礼”とか “いずみがチョコ好きだから”とか“甘党が多いから”とか その辺なんじゃないかなぁ…?」 凜が呟くようにして言った。 「…そうだと良いよね…」 鹿驚が言う。 「……」 みんなで顔を見合わせると、 「はぁ―――っ」 ため息を吐いた。 翌日、二月十四日。 「おはよーっございまーすっ」 元気の良い涼水の声で、一同は目を覚ます。 「何?もう朝?」 寝ぼけ眼の十六夜が聞いた。 「はい!チョコレート出来ましたよ!」 ずらーっと机の上に並べられたのは、いろんな形のチョコレート。 「うわぁっすごい!」 鹿驚が目を輝かす。 「アレ?いずみは?」 涼水は辺りを見回した。 「多分、仕事場ー。 涼水、持ってってあげなよ」 草希が早速チョコにありつきながら言う。 「はい!」 涼水は笑顔で答えた。 「いずみー?」 「ん?涼水?」 書類の山に埋もれる、銀色の少年。 「チョコ出来たよ?」 「…僕に?」 少し、表情が変わる。 「昨日、約束したでしょ!鼻血出るほど食べさしてあげるって」 涼水はにっこりと笑った。 「ありがと」 いずみも、いつもよりやわらかく微笑んでいた。
20090201