戻ってきてと縋る声すら消えて
その姿を思い浮かべようとした時、真っ先に出てくるのは赤い色だった。 と言っても彼女自身が特別赤かった訳ではなく、その毛先が少しだけ赤みを帯びていた程度だが。 今となってはこうして彼女を懐古することが出来るのも私一人になってしまって、 それが間違いだとか何だとか言ってくれる人もいない。 否、いるにはいるのだろうけれど、それは私には見えないものであるから出来ないのだ。 彼女は本当に、そう、生命を捧げてしまうくらいにはそのあかを愛していて、 あの日、言われるままにそのあかを守っていなくなってしまった。 それはきっと正しいことだったし、素晴らしいことでもあるのだろう。 誰一人彼女のことを覚えていないのは、 それが悲しいことである証明のような気もしていたけれど。 そう生まれたから、と片付けることしか出来ないそれを恨むこともなく、 最後に馬鹿正直に説明までしてくれて。 私にはそれがどうしても、 「…馬鹿」 狡く思えてしまうのだ。
(狡い、赤) 診断メーカー
20131004