しゃらしゃらしゃらり。
夢だった。 こんな馬鹿馬鹿しい夢を見たことはないのですぐに分かった。 足にはなにかが絡まっている。 黎明堂の庭にもよく生えているそれは、長く蔦のようになる植物ではなかったはずだが。 夢の中の鹿驚は、足に絡まったその青い花が嬉しいようだった。 しゃらり、音がして手を見ると、其処には手錠があった。 これもまた露草と同じく気にならなかった。 むしろしゃらしゃらと鳴る音が可愛らしいとさえ思う。 誰かが、手を差し伸べた。 手錠に触れたがっているようだった。 施しを与えるのもつとめだ、差し出す。 すると手は嬉しそうにその金属に触れていった。 しゃらり、また音がする。 本当は。楽しそうな手を見ながら思う。 手の先に誰がいるかなど、どうでも良かった。 一番にそばにいてほしい人間じゃないのが分かっていたから、どうでも良かった。
鹿驚は露草を足に絡めています。 嬉しそうな様子です。 手錠をはめていて触ろうとすると快く差し出してきます。 そばにいたい人がいます。
20150107