贈り物 



for 草希

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song by cocco「卯月の頃」

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リクエスト:「冬のうた(Kiroro)のイメージ絵」




大神さまへ

300打
Better better Adventure 『貴方は勇者に選ばれました(笑』
ふざけた手紙が、全ての始まりだった。

受け取った次の日、王国軍に連行されて、只今王様の目の前にいまーす。
あれー俺、一般市民…てーか平民。
てーか凡人。
なのに何で―――……って、それより!!
「“(笑”って何なんですか―――!!」
(ツッコミ所はソコか)
「ん、それは、あみだくじで決まったからだ!!」
王様も負けてはいない。
「あみだ!?何でそんなモン―――」
「君は勇者だ。
だから選ばれたのだ」
「そんなモンで―――」
「魔王を倒して欲しい。君にしか出来ないんだ」
「王国軍―――」
「魔王についてはこちらに資料がある。大丈夫だ、安心しろ」
って、話聞けよ!!!!!



魔王についての資料を渡され、城を放り出されて数分。
ツッコミも許されない王様との対話は、正直疲れた。
ツッコミ専門の俺がツッコめないなんて―――……。
心の中で葛藤していると、
「勇者様…」
付いてきた二等兵が、
「んぁ?」
「全部、口に出ています」

「コホン。これは魔王についての資料?」
「はい」
“勇者様”
その下で小さな文字でカッコ書き。
(あみだで選ばれた不幸な人へvv)
(文字が大きいとかのツッコミは一切なしの方向でお願いします)
「ふさけんな―――!!!」
ポーンと資料を投げ出す。
「こんなこと書くくらいなら、あみだで何か選ぶなっつーんだ!!
ボケか!?確信犯か!?それとも愉快犯なのか―――!!!」
「…勇者様、おれ、今分かりました」
二等兵が口を開く。
「あみだで勇者なんか選べないってことか?」
「いえ」
少し息を吸ってから、キラキラとした笑顔で、
「本当の勇者はツッコミの才能のある人なのですね!」
二等兵、違う。



「コホン。資料読まなくちゃ」
資料を手にとって、ぱらぱらとめくる。
城までの地図。
城の内部の見取り図、そして、魔王の種類。
「何々…?魔王は五人いるのか。その一番上を倒せば良いんだな」
「はい。一番上は手強いです。これまで何人もの人が…」
「…俺、逃げてイイ?」
「勇者様は人を笑わせる才能があるのですね。
ありがとうございます。少し緊張が取れました」
二等兵、やっぱ違う。

「えーと…五人の魔王は…」
ぱらりとめくる。
そして固まった。
「一番強いのと、ゲームオタクと、甘党と、極度の怖がりと、ヒステリックです。
ちなみにヒステリー起こす魔王は女性ですよ」
いたって普通に説明する二等兵。
「…もう、帰ってイイ?」
「勇者様、おれはもう大丈夫ですよ?」
二等兵、天然キャラ決定。



二人は魔王の手下を倒しながら、城へ向かっていた。
そして、

「「ついた!」」

二人は手を叩いて喜ぶ。
そのまま、城へ乗り込んだ。



「オラオラオラーッ!勇者様のお通りだァー!!!」
ノリノリ。
「おれも勇者になるんだァー!!!」
あんたがなれば良かっただろ、二等兵。

そんな風にノリノリで、二人は城を進んでいった。



「さて…」
声を潜める。
「この先に魔王がいるわけだ」
二等兵が頷く。
「行くぞ」
勇者らしく―――
 バンッ
勢い良くドアを開けた。

「バカー!!ゲームクリアしたのにセーブし忘れたじゃん!!」

 バタン
閉めた。
「あれはゲームオタクの魔王か?」
「多分そうです」
二人は顔を見合わせてから、
 キィ
ドアを開くと、とりあえず、
「「魔王覚悟ー!!」」
倒しにかかった。

「何か、倒して良かったのかな」
「勇者様のすることに、
間違いはありませんよ」
 ピコピコ
「そうかぁ…?」
 ピコピコ
「そいうもんです」
 ピコピコ
「俺、もう少しだ」
 ピコピコ
「おれもですよ」
 ピコピコ ピッピロリーン
「「クリアー!!」」
二人はやっていたゲームを置いた。
「クリアしたし、セーブしたし、良いだろ」
「そうですね」
二人はゆっくりとその部屋を去った。

「オレの…ゲーム…」
隅っこでは、ゲームオタクの魔王が、膝を抱えてしくしく泣いていた。



「一人目は弱かったなー」
「まァ、ゲームオタクですから」
「要するに、ヒッキーなんだろ?」
お前ら、世の中のゲームオタクに謝れ。

そうして和気藹々と会話をしながら、二人はずんちゃかと進む。
すぐに二枚目のドアに当たった。
「行くぞ」
再度勇者らしく、勇ましくドアを開け―――

「オレのドーナツ食ったの兄ちゃんだろ!?」

―――やっぱり閉めた。
「…次は甘党か」
「…そのようですね」
二人は顔を見合わせてため息。
その間にも、中の叫び声は止まらない。
「プリンもなくなってるし、チョコもない…。ぜってー兄ちゃんの仕業だ…。
アレは大金払って外国から取り寄せた、数少ないレアモノなのに…」
自慢にしか聞こえない。
「あァ、あのとろけるような味わい…。舌の上に乗せるとふわっと溶けるような…。
そして、頬を落とすどころか、脳みそまで溶けそうな…」
そのまま溶ければ良かったのに。
「…て、アレ?何でオレ、こんなに良く知ってるんだ…?
あ―――っ!!!!」
魔王の叫びが再び大きくなって、
「オレが食べたんじゃん!!」

ばんっ!!

二人はドアを開けて乗り込んだ。
その顔は、この世のモノとは思えなく―――
「お前はこ●し君かァァァ!?!?」
でも、ツッコミは忘れない。
(ハ●太郎のキャラソン参照)



「…うまいな」
「そうですねー」
妙に感心した様子の勇者と、ものすごく嬉しそうな二等兵。
「兄ちゃん…オレのお菓子が消えていくよ…」
部屋の隅っこ、つるし上げられた甘党の魔王が、鼻水を垂らして泣いていた。



「二人目もあっけなかったな」
「甘党ですし…」
「おい、気をつけろ」
「え?」
「甘党が弱いなんて言い方すると、命が危険なんだ」
「…?何でですか?」
「何でも良い!!」
和気藹々…?と会話が続く。
「分かりました勇者様!勇者様はおれを守ろうとしてくださってるんですね!」
「え?」
「あ、それとも、安易に色々教えないのが勇者なんですか?」
「え、ちが」
「そうなんですね!分かりました!!ありがとうございます!!」
何でコイツが付き人に選ばれたんだ…。
キラキラ光る目をして手を握ってくる二等兵を、困ったような、呆れたような目で見る。

二等兵、天然+思いこみの激しい性格。
けれど純粋。



二人はとことこと階段を上っていく。
「しかし、こんなに簡単に入れて良かったのか?」
「どういうことですか?」
「罠が一つもないなんて…」
魔王二人と出会っただけで、その他は一つもない。
警備兵もいなければ、罠一つ仕掛けてある気配もない。
「本当に、大丈―――」
言いかけて、
「ぎゃあああぁぁぁぁっ!!」
二等兵の叫びと共に、二人は落とし穴に落ちていった。

「…罠、あったな」
「そうですね…」
「大丈夫か?」
「はい…」
「じゃあ退いてくれ」
「え?」
二等兵は自分の状況を見る。
自分は座っている。
どこに?それは―――
「ゆ、ゆ、ゆ、勇者様!?」
勇者の上。
「な、何でこんなことに!!」
「ん?あー…多分偶然だ」
目を逸らす。
「まさか、勇者様、おれを―――」
勇者の顔が赤くなった。
図星といっているようなもの。
「かば…って…」
今にも泣きそうな二等兵。
「大丈夫だ」
手を伸ばそうとして、動かないことに気付く。
「勇―――」

ばんっ!!

二等兵が手を伸ばしかけた時、ドアが開いた。
「あ…」
魔王だ。
勇者は思う。
倒さなくては―――。
(てか、いつの間にか勇者様、王様の作戦?に嵌ってますね)
でも。

意識が遠退いていく。

「か、金ならないぞ!?!?」
俺たちは強盗じゃねぇ。



目が覚めると、魔王が使っていたであろうベッドに寝ていた。
「勇者様…」
「…さっきのは、臆病な魔王だったんだな」
「はい」
「どうなった?」
「倒せました…何とか」
沈んだ表情の二等兵。
「とりあえず、魔王が臆病だったので、部屋に色々な薬がありました。
だから、勝手に使わせてもらって…勇者様の治療にあてました…っ」
俯いて、
「すみません…っ」
泣きながら頭を下げる。
「お前、コレは―――」
「あ―――っ!!何なのよアンタたち!!」
 キィ―――ンッ
耳に響く高い声。
女性であることから、多分、ヒステリックな魔王。
二人にシリアスシーンを見事ぶち破ってくれた、今で言うKY☆な魔王。
(☆いらねェ)
「弟の部屋で何やってんの!?」
 キィーン
「てか、兄弟なんだ、みんな」
「そうらしいですね…」
二人の声は彼女の耳には入らない。
「とっとと出て行きなさい!!」
 キィーン
 ズガッシャーンッ
魔王は花瓶を投げつけた。
勇者は咄嗟に飛び退く。
二等兵は―――
「勇者様!?」
―――勇者にお姫様だっこvv
(何かホント、ベタだなァ…)
「いろんな意味で危ねェよ!!」
魔王に対しても、やっぱりツッコミ。
「うるさーいっ!!」
 ガッシャンガッシャンガッシャン…
勇者は魔王の後ろに回ると、
 ガッコン
首筋を、
思い切り蹴飛ばした。
(生身の人間にやると、死ぬ怖れもあるから、やらないでネvv)

 バタン
魔王が倒れる。
「ふぅー…」
勇者はため息を吐いた。
「あの、勇者様…」
「ん?」
「そろそろ降ろして欲しいのですが…」
「あ、あぁ」
そう言えば、お姫様だっこされっぱなしだったよ二等兵。
「てか、お前、軽いのな」
コレ伏線ですよ、覚えておいてください!
「おれ…迷惑かけてばっかりですよね…」
あ、再びシリアスモード。
「そんなことないぞ!」
勇者力説。
「お前がいるだけで、俺は心強い!!」
何か、プロポーズくさいよ。
「勇者様…」
「だから…気に病むな。お前が元気ないと、調子狂う…」
あー慣れって恐ろしい。
「勇者様!!」
二等兵が、やっと顔を上げた、その時。



「ふわっはっはっはっはっはー」
古風な笑い声が聞こえ、現れたのは―――

「って、王様!?」

話を聞かないのでツッコミのしようもない、あのあみだの王様だった。



「良くここまでたどり着いたな、勇者。
褒めてやろう!!
あ、今の台詞、何かすごく魔王っぽくね?」
自分で言うな。
「ていうか、王様が魔王なんですか!?」
アァ、仕組まれたことだったのだ―――。
勇者は思う。
あみだで決めたのは、結局自分が倒されることがないからなんだ。
今日ここで、俺は死ぬんだ―――。
「目の前が真っ暗になった。気付いたら、ポ●モンセンターだった」
「なんでポケ●ン!?!?」
二等兵の突然の発言に、すかさずツッコむ勇者。
どんな時もツッコミを忘れない、勇者の心得そのいち(ぇ
「勇者様、いつにも増してツッコミのキレが良いですね…」
いや、書いてる人間同じだから。
キレも何もないから。
寧ろ、ギャグが結構思ったより難しくて、苦戦してポ●モン出しちゃった位だから。
そして二等兵、ハッとなって、
「勇者様、さっきまでの傷が…!」
「え…!?」
見てみれば、完治している。
「どういう…っ!!」
爆風が起こり、王様が横に降り立った。
「勇者…」
 ニヤリ
魔王顔負け、ア、魔王だったっけ?
とにかく、ものすごく悪人ぽく嗤う。
「何かうちの娘とラヴラヴvvしてんじゃねーか」
死語だよ。

「ていうか、娘って…」
勇者はハッと横を見る。
二等兵が俯いている。
「まさか…!!」
「すみません、勇者様…」
謝らないでほしかった。(勇者の心の声より抜粋)
(てか、アレ?シリアスモード?)
「謝るなよ…。そう言う趣味でも、俺は別にお前を差別しない」
「え?」
「大丈夫だ、お前は素晴らしい仲間だ」
今度は勇者、何か違う。
「あの…勇者様」
「何だ?」
「男装していただけで、別にそう言う趣味じゃないです」
「………そうなのか」
「はい、そうです」
ふっ二等兵、まだまだツッコミが甘いな。
「………」
沈黙。
そして、
「えと、色々ごめん…」
勇者が頭を下げる。
「お姫様って分かっても、今までと態度、変えられない…」
すげェな。

「それで良いんだ!!」
王様が叫んだ。
そう言えば、王様こと魔王の存在忘れてたよ。
「それでこそ我が娘の、婿に相応しい!!」
…は?



時は流れ―――

取り乱した勇者と、真っ赤になった二等兵、こと姫と、
始終ニヤニヤ笑っている王様、こと魔王。

全員が落ち着いた所で、魔王は話し始めた。
「うちの娘は、もう年頃なのに、色恋沙汰一つなく」
「はい」
「父として私は心配だった」
二等兵がちゃぶ台を出してくる。
「そしてそこで、娘に相応しい男を、あみだくじで」

 ガッシャーンッ

勇者がちゃぶ台をひっくり返す。
出た!必殺・ちゃぶ台がえし!!(何
「娘の相手まであみだかよ!?」



「一つ、聞こう…」
ちゃぶ台を直している二等兵。
「娘のことは、どう思う?」
勇者は黙ったままだった。





そして、更に月日が流れ―――



「王子!また魔王の末っ子が暴れています!」
「ゲームを壊すと脅しておけ!!」
「王子!魔王の次男が―――」
「お菓子を差し止めすると言っておけ!!」
「王子!ヒス―――」
「気絶させろ!!」
「王子!王様が―――」
「あぁ、分かった!!」
王子―――もとい、勇者は走っていく。
「呼ばれているようだね」
「はい」
かつての勇者と二等兵は、王子と姫になっていた。
「行こうか」
王子は姫に口付けを落とし、二人は手を繋いで、王の部屋へと入っていく。



「何やってんですかァァァ!?!?」
ツッコミは健在。




クマちゃんへ

1616打
BRUIN
ある少女と、ある少女の、ある日のお話。

少女、ブレイン・グレイズはその日、一人で公園にいた。
他にいるのは、小さな子供のみ。
ブレインは、幼い子供が遊ぶのを、ぼんやり見ていた。
彼女の視界を金色が掠めたのは、
偶然と言えば偶然で、必然と言ったら、そうなのかもしれなかった。

「…あっ…」
金色を認識した瞬間、ブレインは反射的に声を上げていた。
金色が驚いて振り向く。
「どうか、しましたか…?」
金色は、人だった。
綺麗な金色の髪をした人。
「―――」
「あの…?」
青い瞳。
蝶の模様が見えた、左目。
「―――きれい」
まるで催眠術にでもかかったかのように、気付いたら、呟いていた。

「え?」
その人は更に驚いた。
「あ、ごめんなさい!
私…いきなり…っ」
その表情を見て、ブレインは我に返る。
何てことをしてしまったのだろう。
初対面の人に、突然物を言うなんて。
「あ、あの―――」
俯き気味に謝罪をしようとすると、
「―――ありがとうございます」
「え?」
その人は、笑って礼を言った。



「オレはカレンと言います」
綺麗な人は、すとん、と、ブレインの隣に腰を下ろした。
「私は、ブレインです」
ブレインも名乗る。
「ブレインですか。良い名前ですね」
「ありがとうございます」
ブレインは笑う。
小さい頃は、良く「レイン」とからかわれた。
けれど、ブレインは自分の名が気に入っていたから。
「ブレインは、どうしてここに?」
カレンが訊ねる。
「私は」
ブレインは少し空を見て、
「もうすぐ死ぬらしいんです」
「え?」
カレンの青の瞳が、大きく開かれる。
言うつもりはなかったのだけれど。
しまった、と言う思いも浮かんでこなかった。
「ご病気、ですか?」
こくん、と、ブレインは頷いた。
「血液が、腐ってしまうらしいんです。
今はまだ、少しだけれど、そのうち、体中に広がってしまうって」
「治す方法は…」
「ないと言われました。
本当は、血をぬいてしまえば良いのだけれど、人の血を抜く限度は決まっていますから。
一晩おいてしまえば、また悪い血は戻ってしまうし、もう手遅れだと」
ブレインは笑う。
輸血しながら血を抜くと言う手も、無い訳ではなかった。
けれど、それにはお金がかかりすぎるから。
ブレインの家は、貧乏と表現できるくらいだったから。
「哀しく、ないんですか?」
カレンが聞くと、
「分からないんです。
何か、突然事実を突きつけられて、ぼうっとしてしまって」
ブレインは、困ったように笑った。

「カレンは、何を?」
「オレは食事をしにきました」
「晩ご飯ですか?」
今の時間は四時。
流石に、お昼にはもう遅い。
「そうですね」
カレンは少し考え込むようにして答える。
「一週間に一回の、栄養補給と言った方が、良いかもしれません」
「栄養?」
ブレインは首を傾げた。
「オレ」
カレンはブレインを見つめる。



吸血鬼(ドラキュラ)なんですよ」



ブレインは目を見開いた。
「ドラ、キュラ…?」
子供の声が響く。
「はい。そこで、頼みがあります」
カレンはにっこりと笑って、
「オレのご飯になってください」
その指先が、すっとブレインの首筋を撫でた瞬間。
「ァ―――…」
意識がどこかへ引っ張られ、ブレインは気を失った。

「いただきます」
カレンの声を、暗闇の中で聞いた。



ブレインが目覚めると、そこは病院だった。
両親がいて、警察がいて。
そしてようやく、自分が襲われたことを思い出す。
「―――……」
ブレインは首にそっと手を当てた。
歯の跡。
噛まれて、血を吸われた跡。
「なんで、生きてるの…?」
あの瞬間、死ぬと思ったのに。
吸血鬼が満足する量の血を抜かれたら、生きている人間なんて居ないはずなのに。
「ブレイン」
母親が歩み寄ってきて、
「病気、治ったって…」
「―――え?」
非道く、場違いで不思議なことを口にした。

その後の話をまとめると、警察に匿名の通報があったらしい。
吸血鬼に襲われて、倒れている人がいると。
すぐに警察が駆けつけると、倒れているブレインがいた。
ブレインは重要参考人として病院に搬送。
警察の金で、輸血をされたのだという。
ブレインの吸われた血は、病気の所のもので、
それも、全てが綺麗になくなっていたそうだ。
もう再発の心配もないと言われ、ブレインは今まで通りの生活に戻った。

警察には、綺麗な吸血鬼の事は言わなかった。
突然、後ろから襲われたことにしておいた。
なぜなら。

カレンが、わざと悪い血を吸っていったのではないか。
匿名通報も、カレンだったのではないか。
ブレインは独り思った。
吸血鬼がどこでも好きな箇所の血を吸えることは、有名な話で。
例え噛みついた場所が首筋でも、生まれたばかりの血を吸うことが可能。
だから、自分を助けるために。
もしかしたら。

「―――ありがとう、カレン」
ブレインはそっと呟いた。
自分を助けてくれた、綺麗な人に。
命を救ってくれた、心優しい吸血鬼に。



「やっぱ、悪い血は不味いや…」
同じ空の下。
どこかで。

カレンはそっと一人、眉をひそめた。




夜月さま

テーマ:最愛の人を失くして前向きになる リンク



世界に意味が失くなった
まるで 貴方だけが世界を構成していたかのように
褪せてゆく彩り
まるで 古くなった写真のように

灰色の空に覆われた
胸の鉛玉は心臓を転がって
重みを増す頭
吐き気だけが全身を支配する

どうして時は動いてゆくの
貴方は止まったまま 私は進む 壊れてゆく
琥珀色の涙 堕ちた先に
求めるものがあるのなら…

この鎖の冷たさに 価値をもたらそう

貴方の居ない世界で生きてゆく
溢れる思い出 両腕に抱(いだ)いて
明日はきっと 唄えるように
光り零れた
空も微笑(わら)ってくれた気がした

影に臥した身体から
瞳に住み憑く兎は家出した
夢も廻(み)ずに
マドロミの淵で彷徨ったまま

どうして人は生きているの
貴方は笑ったまま 私は泣くことすら出来ずに
耳元のささやき 愛はきっと
飾りものなんかじゃないって…

この鎖の重さに 名前をつけよう

貴方の居ない世界で生きてゆこう
生きていた証 この胸に刻んで
貴方に誇れるように
視えたマボロシ
天国の入り口で待ってて

精一杯 生きて 生きて
想っている時間 忘れないように
そうしていたら きっと きっと…

この命にもしも 意味が在るなら

貴方の居ない世界でも生きてゆけるかな
愛惜から繋がる命
明日はきっと歌を歌おう
顔を上げて
貴方が愛したこの世界で この世界で

サイト一周年記念 僕らの城を繋ぐ橋



僕らは言の葉を
パズルのように組み合わせて
小さな小さな
城を創る術を持っているね
それは本当は誰にでもできるけど
気付いてない人ばかり
僕らは偶然的にそれに気付いて
必然的に出逢った
城から伸びる
幾筋もの橋
その中の一つの上で

僕らはその上を歩いているね
今この時
その足場はとてつもなく不安で
恐怖に揺らされる
でもそれは
僕らの創ったもの
僕らの子供
だから怖れることはない
ふるえるのなら足を止めて
濡れるのなら
しゃがんで掌を優しくつけて

「どうして 怯えているの?」
訊ねてみれば 解る

濡れていたのは僕らの瞳
ふるえていたのは僕らの身体
揺らいでいたのは
僕らの幻影(ビジョン)

指先を伝う紅い泪は
いつも哀しみを映していて
その鋭さは
いつしか僕らを貫くのではないかと
僕らは戦(おのの)く
けれど
僕らは前へ進む
溢れ返る思い出を
死した欠片を胸に

指先から
血が滴ろうとも

この手を
繋ぎ続ける限り







夜の月



誰かを救いたいんだ
僕か詩うことで
誰かが何かに気付けるのなら
詩いたいんだ
この声が枯れようとも
泣いてくれたあの子のために
傷つき続けるあの子のために

偽善だと思うかい?
でもそれが

僕を生かす唯一の術

(馬鹿と呼ばれても
全くかまわない)




for はるた
バレンタインリクエスト 「すき」



「ハッピーバレンタイーン」
語尾に星が付きそうな明るさで黎明堂に入ってきたのは、涼水の予想通り。
「凜さん、いらっしゃいませ」
「やっほーすずちゃん。ハッピーバレンタイン」
「ハッピーバレンタインです、これ凜さんに」
「ありがとー。これは私から」
掌に落とされたのは綺麗にラッピングされた小箱だった。
それを見ると自分の包装したものが貧相に見えてくる。
しかしながら以前そう零した時に、
こういうものは優れている・優れていないじゃないの、
気持ちだよ、気持ち!と叱られたので、口にすることはしない。
「いずみも呼んでお茶にしましょう。ゆっくりしていけますか?」
「うん、大丈夫だよー夜にはお店の方に顔出したいけど、それまでは暇」
「良かった」
そんな話をしながら居間へと向かう。

おやつだよ、と廊下の向こうの書斎へ呼びかけたらいずみはものの数分で現れた。
流石おやつの力である、他の時は部屋まで行って声を掛けなければ気付かないというのに。

三人揃ったところでいただきまーす、と声を合わせてお菓子を開けに掛かる。
凜にもらった小箱を丁寧に開けると、中には丸っこいチョコレートが鎮座していた。
一つ取り上げて口に入れる。
「美味しい!」
外のチョコレートも美味しいが、
薄いそれを歯で割ると、中からとろりとしたソースと何やら果肉が出て来る。
「柑橘系…ですよね。でもオレンジじゃないし…」
「あ、それゆずだよ。美味しいなら良かった」
ちょっと実験的なところもあったんだ、と笑う凜に涼水は頷く。
実験とは言え普通に美味しい。
このまま店に並んでいても不思議ではない。
「ゆずですか!
オレンジとチョコは良く見ますけど、ゆずも合うんですね〜」
「でしょでしょ。
私ゆず好きだからね、
好きなもの合わせたら美味しいんじゃないかってやってみて正解だったよ〜」
その言葉に、
今まで一言も発さずに涼水の隣で黙々とチョコレートを食べていたいずみが顔を上げた。
「アレ、凜っていちごが好きなんダと思ってタ」
ぽつり、零されたのはそんな言葉。
涼水は勿論、言われた凜も首を傾げている。
「いちご?」
「ウン。いつモ飴とかチョコとか、いちご味ばっかリ食べてたカラ」
好きなんだと思ってた、といずみは続けた。
でもその反応じゃ別にそういう訳じゃなかったんだねーという言葉に、
凜は少し考えこむようにして、それからああ、と小さく呟く。
「好きになってた…のかな?」
「好きになってた?」
思わず尋ねた。
少し引っかかりのある言い方で、好奇心が湧いたというのもある。
こうしていつもお菓子を持って遊びに来てくれる回数は、
常連の中ではダントツに多いのだろうが、それでも凜のことを良く知っているとは言いがたい。
涼水は、彼女といずみがどうやって知り合ったかすらも、知らない。

そんな興味本位の問いに返って来たのは微笑だった。
いつもの笑みではなく、何処かドキッとするような、艶めいた微笑み。
「なーいしょ」
そう言って唇に指を当ててみせた凜は何かを懐かしんでいるようにも見えた。

最後の一欠が涼水の口の中で溶けていく。
ふわり、とゆずの甘酸っぱい香りが、鼻腔を抜けていった。




貰い物 



from はるた
HP開設記念絵を頂きました! ありがとうございます!!


300打&バレンタイン

ありがとうございます!

イベント小話のお返しにいただきました!
白狐メンバーでデュラララ!!EDパロ



白狐シリーズの鹿驚をいただきましたー! かわいい!










従業員組を描いていただきました!




草希の誕生日祝いをいただきました!
BF(仮)風。
曰く「今更ガールフレンド(仮)のカードに何でしなかったのか後悔」「HRで微妙に中々キューピッドで出ないツン草希さん」


バレンタインの返礼品いただきました! ありがとう!












特に何事もないがいただいたもの。
一つ目は背景に使用させて頂いております!



from 春
1000hitの絵いただきました! カゲロウくんのことがとても好きです。




from 夜月
歌詞のお礼を頂きました! ありがとうございます! 前を見据えて
何を想う?

背は届かなくとも
背伸びしろ

足は遅くとも
ただ走れ

空の布を纏って
海の地を進め

走れ
ぶつかるまで



日が沈む頃には

また

僕は少し強くなれてる?

水をすくっても
まだ
癒せるほどはすくえない

でもいつか
花にもあげられるくらい
強くなれそうな気がするんだ

枯れかけた花を見つめて
呟いた



僕は詩人。

言の葉を飾りつけることができる。

なんの力もない一言を
心に届けること。

ただ1つのテーマを
素敵な言葉に変えて。
素晴らしい詩をつくることができる。

自己満足かもしれないけど。
ただ、言葉を自由に操ってみたい。

誰かがずっと忘れないような
詩をつくりたい。

誰かの心に
ずっといられる詩。


ずっと、つくりだして。


ずっと唄ってみるよ。

一周年記念お祝いのお礼をいただきました! 今から貴方に何を届けよう?
僕の手から創りだせるものなんて
数多くあるわけじゃない
数少ない僕の本の中から
最高の物語創ってみせるから

貴方の術は
貴方だけに与えられた力なんでしょう

僕には創りだせない
誰にも創りだせない
物語

何処までも謎めいて
答えはすぐそこにあって
隠すように綺麗に飾りつけられた
物語

そこに見える文字より
遥かに続く
物語

答えが見えた先は
深く刻まれる文字

貴方が持つ最高の術




Imperfect Ode.さまより

年賀状フリー配布

丑年も応援させていただきます!



シタリニクエさまより

これからも応援させていただきます!



クロハコさまより
五周年記念絵

ゆさとさま、五周年おめでとうございます! かげながら応援させていただきます!
(クロハコ:フリー配布画像)



松之木さま

白狐シリーズのいずみを描いていただきました! ありがとうございます!!



from 水沙















描いていただきました! ありがとうございます!



20191229