自傷痕
アァ――― 僕ら、お揃いだね――― そう言って、彼は笑った。 左手首内側の、浅い浅い無数の傷。 生きていたかった証。 死にたくなかった証。 彼の笑顔はとても奇麗なのに、そう、まるで人形のように、 精巧に作られたかのように、奇麗なのに、何故か背筋が凍る。 嘲笑ともつかないものを、掌に感じてしまう。 アァ――― 僕ら、お揃いだね――― 彼は再び言って、僕の瞳を覗き込んだ。 この傷痕の負う重みは どうせ 違うのだろうけど それが、彼の心。 彼の、仮面の下の素顔。
執筆日不明 / 旧拍手