空を見上げた。月が出ていた。どうにも静かな夜で、それが本当に月なのか怪しくなった。 「おい、お前は本当に月なのか」 「当たり前だろう」 「当たり前なものか。お前が本当に月ならば返事など返って来るものか」 「なんだとう」 月(仮)は怒ったようだった。みるみるうちに空に浮かぶ月(仮)が赤くそまっていく。 スーパームーンか、と笑ったらそうだそうだと返される。どんどん月(仮)は赤くなっていく。 なんだかたこ焼きに見えてきた。お腹すいたな、と呟く。 すると月(仮)は興味を失われたのだと思ったらしい。もっともっと赤くなっていく。 それが面白くて笑うともっともっともっと赤くなった。今にも破裂しそうだ。 「お前、本当は月じゃあないだろう」 「まだ言うか」 月(仮)はそう叫んで、それでパァンと弾けてしまった。 ぱらぱらと舞う月の破片の中を笑いながら駆け抜ける。 そうして草の上に倒れこんで初めて、そういえば酒を飲んでいたことに気付いた。 空を見上げる。月が出ていた。 さっきまでの静けさは偽物と一緒に弾けてしまって、妙に騒がしい夜だった。月は本物だった。
20150309