二択―知っていること―
「二択しかないの?」 自分でも、非道い質問だと思った。 二択。 増やそうと思えば増やせるんだろう。 でも、きっと、彼女は。 「ねぇ」 いつもと同じように、俺は彼女に話しかけられた。 俺達は周りに、事実とは違うように受け取られているらしい。 でも、実際は何もない。 “友達” 括りきれない感じはぬぐえなくても、きっとこの表現が今は一番正しい。 「どうした?」 「聞きたいことあって」 「ふん」 俺は彼女を見た。 彼女が聞きたいこと、と言うときは、きまって難しい質問だ。 質問自体が、ということではなく、答えることが、だ。 「今仮に好きな人がいるとして、関係が悪くなることを覚悟で告るか、 バレバレでも黙っているか、どっちが良いと思う?」 「え?」 思わず聞き返してしまった。 今日の質問は、また一段とハードルが高い。 「その、どっちかだけ?」 俺は少し考えて言った。 「うん」 頷く彼女。 「二択しかないの?」 答えを予想していながら、俺は聞いた。 …敢えて。 何がどうなっているか、手に取るように、という程ではないけれど、 肌で感じるほどに、分かっている。 本当は、知っている。 だけど。 「…うん、二択しかないの」 苦しそうに、切なそうに、 笑う彼女の保つ曖昧さに、甘えて居るんだ。 実際のところ、その曖昧さが異様に心地好くはあるのだけれど。 (進むのが怖いなんて、言えないだろうから)
執筆日不明