正義は白色をしていない
まんぼうなのに。 魚の中で強い順にランキングを決めろと神様に言われた。 そんなの俺に決まってるだろうといろんな魚がこぞって手をあげ殺し合いを続けている中で、 結局死ぬからと断った僕だけが残ってしまった。僕はまんぼうなのに。 魚、ランキング、強い * 正義は白色をしていない 山賊のようだな、と言われた。黒の高級なスーツを翻してその声をたたっ斬る。 今更知ったのか、と嘲笑をつけるのを忘れない。 弁護士なんて、誰にでも使える言葉で戦う分、それだけ質の悪い生き物なのだから。 山賊、弁護士、黒 * ラブコメには発展しない(死ね) 初めてだった。だからホテルに入るのにも大分苦労したし、顔が火照っていないか不安だったし、 こんな馬鹿みたいな台詞を信用してなどいなかった―――寧ろ期待までしていたのに。 「…何出して来てんの」 「太鼓の達人」 「え、なんで」 「何でってやりたいから…」 何もしないから。 その台詞が本当に本当であることがこんなに腹立たしく思える瞬間が来るなんて、思っていなかった。 初めて、ホテル、太鼓 * その指先から魔法を紡いで見せて ピアニストは鍵盤に虹を見るのだと言う。けれども相瀬は赤が欠如している、と笑っていた。 「どうしてかね、ある日消えてしまったんだよ」 僕の赤は何処に行ったんだろうなあ、そう嘆く姿を知っていた。 だから、あの日、お風呂の掃除をしていた相瀬の背後から近寄って、包丁を突き立てたのだ。 どうして、と息を吐く彼の、 その細い身体からは生きている証が流れだしていて、紅の世界で僕は笑ったのだ。 「ねえ、これで虹は完成したでしょう?」 ピアニスト、お風呂、紅の * 真っ黒なお金 「この間さあ、タクシーの運転手が暴走しちゃって料金メーターがすごいことになっちゃって」 唐突に話し始めた同い年の科学者に嫌な予感しかしない。 「………それで、どうしたんですか?」 「運転手気絶させてそのまま後ろから車操作して乗り逃げ」 「やっぱり! やっぱりこの間のタクシー強盗貴方だったんですね!?」 「強盗じゃないよ、賃金は置いて来たし」 「そういう問題じゃないです…」 タクシー、暴走、料金 * 探偵は無駄に意味深なことを言う 村人が一人殺されたそうだ。助手席の自称探偵にそう言うと、別に殺された訳ではあるまい。 「自然というのは我々の目を欺くことを容易く行い、 殺人を繰り返してきた、とでも言えば良いのかい?」 祟りなんてものはないんだよ、ただの悲しい事故だ。 そう続ける彼は悲しそうだったけれども、彼の過去に何があったのか私はまだ、知らない。 村人、助手席、欺く * 同じ理由で豆腐も怖い 加藤の前世は大豆だったらしい。 「だからさ、俺、今でもちょっとしょうゆが怖いんだよ」 「なんで」 「さぁ? 多分すり潰されるからじゃね?」 加藤、前世、しょうゆ * 愚者に一票(ドーナツ店で見ました) 賢者はチェーン店になどはいらない。 「生徒会長とか見てれば分かるだろ?あの人はどっちかってと桜散るござの上で花見じゃん?」 そもそも生徒会長が賢者かどうかというのはお呼びでないらしい。 賢者、チェーン店、桜散る * インデックスパターン 虫も殺さないような少女だった私が、自分で殺して自分で埋めた猫の命日に花を供えるなんて。 ああなんて馬鹿らしいんだろう。あの日私は少女を卒業してしまったのだ。 通学路だった道に、少女の背中が見えた気がした。 虫、通学路、命日 * いち、に、さんでまた明日 擬態することがそんなに大事だろうか。黒板にでかでかと書かれた悪口を見つめながら思う。 同じものを好きだと言って、同じものを持って、同じもので笑って。それの何処が楽しいのだろう。 笑う声を聞いていた、ひそひそ話を聞いていた。 誰が持ってきたのか、お供えのように置かれていた百均くさいぶどうの乗った机。 それを蹴飛ばしたら、教室がしん、と静まり返った。 擬態する、黒板、ぶどう ライトレ
20150603