たとえばのはなし
「例えばの話をしようか」 少年の笑みに、少女は首を傾げる。 「例えばの話?」 「そう」 少年は人差し指を立てた。 「例えば―――竜を飼っているとか何百年も生きているとか」 「有り得ないわね」 少女はふん、と鼻を鳴らす。 「うん、分かってる」 少年は笑ったまま続けた。 「あとは…UFOに乗ったことがあるとか 動物と会話ができるとか実はタイムマシンを持ってるとか」 「全く現実性のない話ね」 少女は欠伸をする。 「もう少し夢を見る気は?」 「ないわ。 貴方こそ、現実を見たら?」 そうだね、と少年は頷いて、最後に一つだけ、と少女の耳元へ寄った。 少女の目が大きく見開かれる。 「例えばの話だよ」 少年は笑った。
執筆日不明