時が過ぎても
僕らはそれが生まれた瞬間にはもう一緒だった。 その枠組みの世界で生きていくこと。 それが、捨てられるまでの僕らの人生。 決して褒められることはない。 幼子が僕らのことを褒めているような時でも、 それは僕らを褒めているのではないことも、良く分かっている。 同じように生まれた仲間たちを、もう見ることはないが、 きっと同じように生きていて、 もしかしたら、もう捨てられているのかも知れない。 僕らは本当は、そんな恐怖に怯えていたんだ。 「僕と君と、どっちが半径なのかな」 ちょうど反対側にいる君は聞いてきた。 「どちら、というのなら、それは君だろ」 「どちら、と言わないのなら?」 君は伺うように視線を投げ掛けてくる。 「俺も君も、この中で動いているだけさ。 俺らの外には、まだ、世界が広がっている」 ああ、と君は頷いた。 その目は俺ではなく、外を向いている。 それきり、会話はなかった。
執筆日不明