当方天使、翼と砂糖と女の子成分募集中。
当方天使、翼と砂糖と女の子成分募集中。 翼がないと女の子はだめなのよと文化祭の舞台の上で少女は言った。 大丈夫、砂糖を舐めれば貴方も翼を持てるわ、もう一人の少女が言った。 演劇部の劇である。天使のように甘いもの、それが女の子、らしい。 不思議なものだ、と思った。性別はまぁ人間に当てはめれば女だろう。 だがしかし、甘い、というのは。あと別に、人間に翼は生えないし、そもそも天使に翼はない。 観客の中、本物の天使は分からんなと首を傾げた。 翼、砂糖、文化祭 * だって僕らは友達だろう! 皆さんは憎悪したことがありますか? 学者は壇上で笑って問うた。 僕はあります、秘密基地を他の子供に占拠されたことです。僕の最初の憎悪はそれでした。 どうにも彼は僕のことを友人だと思っていたらしく、いえ、僕は否定したんですがね、 それでも尚彼の中で僕は友人だったらしいのです。不思議なものですね。 そうして僕の彼に付きまとわれる生活が始まりました。 大人になり引っ越しもしましたが、どう隠しても彼は追いかけて来るのです。 そして、彼は大きくなっても人のものを取るのがやめられなくて、 ついこの間も僕の家から大変貴重なものを奪って行きました。今日発表するはずだった論文です。 しかし論文は暗号化されていて彼らにはただの落書きに見えたようです。 すぐに返されましてね、まあだからこそ僕は今日、此処に立つことが出来ているんですが。 そして、その時の自供を録音したものがこちらになります。 ―――さて、これは正しく、犯罪ですよね? 微笑みを絶やさない学者の視線は僕に真っ直ぐに注がれており、 周りからもじっとりとした視線で突き刺されるのをただ甘受しているしか出来なかった。 学者、秘密基地、憎悪 (一方的なものは友情ではないのだよ痴れ者が) * 何で黙って行こうとするの! いつも旅立ちというのは寂しいものだ。 冒険者ならばそんな夢を成せるはずもないと、 勇者ならば一緒に魔王なんかに立ち向かってくれる、仲間を探すところからであるし。 そもそも主人公ではない自分には関係のないことだったろうか。 電車が参ります、ご注意ください。 そのアナウンスと共に降りてくる足音。たんたん、一段飛ばしで駆ける癖。 もしかして、なんて思った。振り返る。 世界の、色が。 ぐるり一転、変わって見えた。息を荒らげた、その姿に。 がたんごとん、電車がホームに入ってきて、すべてが掻き消された。 仲間、冒険、旅立ち * ホントに駄目だったら僕をお嫁さんにしろよ お前の単位がやばい。 親戚であり隣の家でありうっかり一線を超えそうになったこともある担任教師からそんなメールが届いた時、 ちょうどギターの弦がふっとんだ。しかも六弦だ。よくふっとんだな。びっくりした。 がらりと窓を開けると、既に向こうの窓は開いていた。 「単位とかどうでも良くない」 「良くないわ! 進路調査票だけでも出せ!!」 調査、ギター、単位 * だが恋というものは得てしてそういうものだ これはれっきとしたデートである。私は自分に言い含める。 ふらふらと鉄格子に近寄って、やあこんにちはと言っては警備員に連れ戻される。 それだけの時間。またか、なんて警備員がぶつくさ言うのも気にならない。 今日のデートも素晴らしいものだった。彼からじっとりした目線を戴いてしまった。 明日は自己紹介が出来たら良い。 刑務所の門番にうっかり恋をするなんて前途多難だ。 門番、刑務所、デート * 君がいない日曜日 深淵の底を見たことがあるだろうか。 「同じ哺乳類でもイルカとセックスしようとか思わない訳じゃん」 ひと気のない倉庫でそう呟いた、彼の瞳は確かにそれを映していた。 哺乳類、倉庫、深淵の * あたまがすこしたりない 「受刑者の諸君にはこれからボーリング場に行ってもらいピンの役割する刑を受けてもらう」 囚人たちの驚愕の表情をにまにま眺めていた私に、目の前無表情な囚人がぼそりと呟く。 「ボーリングじゃなくてボウリングな」 羞恥で真っ赤になった頬を隠すようにてきとうな注意を叫びながら、 黙れ、とばかりに手に持っていた警棒でそいつを殴りつけた。 受刑者、ボーリング場、驚愕の * こちら、政府管轄組織通称片付け屋の経理担当です。 溢れ出るオーラが地下闘技場を満たしていく。 「おお、あの力を受け継ぐ者がいるとは…!」 何やら感動されている。さあかかってこいと構えるジジイの前に一歩。 「闘技大会は法律で禁止されています!!」 どんがらがっしゃん、とジジイが飛んでいった。 これであと一仕事、さてこの辺りの馬鹿どもを捕まえなければ。 受け継ぐ者、地下闘技場、溢れ出る * もうとっくに妥協してるわよ 執事が出迎えてくれる家なんてものを夢見ること二十年。 「それが三十年になる前にオレで妥協すれば?」 そんなことを言う幼馴染は、いつになったら私を攫ってくれるんだろう。 執事、家、夢見る * 私の恋を殺してね 今日はカナダにいるはずの浮気相手の命日だ。 私は勝手にまだ死んでもいない人の冥福を祈って、それから今の彼氏の方を向く。 私を棄てた人なら死んだも同じ、そういうことで良いのだ。 「誰への祈り?」 にこにこした彼に同じくにこにこして返す。 「大嫌いな人」 浮気相手、カナダ、命日
ライトレ
20150309